本を読んだ後に価値観や考え方に変化が生まれた経験はありますか?フィクションのストーリーであっても本には人の価値観や考え方をガラリと変えてしまう力を秘めています。
確かに本を読んだ時の自分の状況や心情によってその感想は変わりますが、読後に普段は気にしていなかったことに気付かされたり新たな発見をすることができます。
中でも本記事では読んだ後に色々考えさせられる小説をご紹介しています。
次に読みたい本をまだ見つけられていない方のご参考になると幸いです。
あなたの歩んできた人生は正解でしたか?深く考えることになる1冊【春にして君を離れ】
著者:アガサ・クリスティー
「そして誰もいなくなった」などアガサクリスティーはミステリー作家として有名ですが、この本は殺人は起こらない珍しい1冊です。
いつでも自分が一番正しいことをしていると思っていた3人の子供を持つジョーンは長旅で足止めをくらいます。
砂漠の中で次の汽車がくるまで何日もやることがなく、やがて家族の今まで人生を見つめなおします。
幸せな日常と思い込んでいたものが実は嘘があったり、夫の心に秘めていた思いが明らかになります。
殺人は起こらないですが、心理的なホラー要素が入っていて、人を心で支配する場面は恐怖を感じました。
思い込みが知らないうちに人を苦しめていることもあり、人は簡単には変わることはできない生き物だと思い知らされました。
女性なら共感できることも。リアル世界では体験出来ない壮大な恋愛ワールドを旅できる1冊【金米糖の降るところ】
著者:江國香織
ブエノスアイレスで育った日系の姉妹、二人はお互いの恋人を共有するという変わった約束を子供の頃からしていました。
姉は10年の結婚性生活を続けていた夫と別れ、離婚が完結しないまま他の男を連れて故郷へ戻ります。
姉の淡々とした自由さと、対照的な妹との不思議な関係は江國さんの独特の空気感で表現されています。複雑な人間関係なのに、どこか浮いているような感覚になります。
不倫がいけないとか、浮気はダメだという次元ではなく、恋愛の形ってなんだろうとしみじみと思いました。
タイトルの金平糖を「金米糖」と表記しているのも江國さんらしいです。
家族愛がしみる。祖母が残り少ない時間で孫娘に遺したかったものとは【西の魔女が死んだ】
著者:梨木香歩
児童文学としても親しまれていますが、大人が読んでも心に響く物語です。
学校から足が遠のいたマイはおばあちゃんと数か月一緒に暮らします。自然豊かな森での規則正しい生活でおばあちゃんから沢山のことを学びます。
それから2年、おばあちゃんは亡くなってしまうのですが、おばあちゃんが残したメッセージにマイの中でおばあちゃんは生き続けます。
マイが「おばあちゃん大好き」といった時におばあちゃんが「アイ、ノウ」というやり取りをするのですが、この会話がとても心に残っています。
優しさや、死とは何かといった大きなテーマが詰まった物語です。
「西の魔女が死んだ」は2008年に映画化されています。映画ではおばあちゃんと主人公まいが織りなす温かく感動のストーリーを活字とは一味違う映像で楽しめます。
小説で静かに思いにふけたい・・そんな時におすすめな4つの短編集【あふれた愛】
著者:天童荒太
直木賞候補作品です。
4つの物語から成る小説で、特に「うつろな恋人」が印象に残りました。どの物語も主人公が心に傷を負っています。
相手を愛するからこそ自分の愛情を押し付けてしまったり、支配したいという気持ちが大きすぎて傷づけてしまうところは切なさがありました。
1つ1つの物語は長くないですが、とても重みがあります。
ストレスを抱えながら日々生きること、人への愛情をどう表現するのがいいのかなど深く考えさせられる小説でした。
読んだ後じっくり思いに浸って考えたいなと思う方に読んでほしいです。
思春期の子ども達にとって自分は大人としてどうあるべきかを深く考えさせてくれる【青い鳥】
著者:重松清
重松さんの小説の中でも特に心に残っている小説です。
主人公は中学校の非常勤講師の村松先生。村松先生は吃音症で言葉をスラスラ言えず、いつもつっかえてしまいます。
うまく話せない国語の先生ですが、生徒たちに大切なことを教えています。
いじめをしてしまった生徒や親の愛情を知らなかったり、父親の自殺に苦しんでいたり、思いを言葉にできなかったりと悩みを抱えた生徒に寄り添います。
アドバイスをするわけでもなく、叱るわけでもなく傍にいる村松先生が生徒の心を救っていきます。
言葉で語るよりも一人じゃないと見守ってくれる先生がとても素敵でした。最後は感動して泣いてしまいます。
私も学生時代に村松先生に出会いたかったです。教師を目指している人にも読んでほしいです。
「青い鳥」は2008年に阿部寛、本郷奏多さん主演で映画化されています。
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