男性作家さんと女性作家さん、それぞれ心情の描き方や特徴がありますが本記事では男性作家さんが書いた小説をクローズアップしています。
女性作家さんの小説はどうしても女性目線の心情に寄りがちなところがありますが、男性作家さんの小説は男性ならではの心情が描かれていることもあり男性にとって小説の世界に入りやすいメリットもあるのではないでしょうか。
一部ではありますが男性作家さんによる小説を5つご紹介しますので小説選びに困った男性のご参考になれば幸いです。
既婚者の男性にひっそりと読んでもらいたい【痴人の愛】
著者:谷崎潤一郎
譲二は15歳のまだ未熟な世間知らずなナオミを一流の女に育てようと妻として迎えます。
譲二はナオミを自分好みの女にしようと思っていたものの、ナオミは成人すると遊びほうけ、描いていた女とはかけ離れた女になります。
譲二の生活も堕落していくという哀しい物語です。
100年近く前に書かれた小説ですが、今にも通じるものがありました。
純文学の中でも読みやすい文章です。ナオミの貴婦人を真似しようとするが、下流が出てしまう独特の話し方が印象的です。
ナオミは魔性の女という代表格な気がしますが男性が読むと何とも言えない興奮に似た感情が沸くでしょう。
この小説は男性、特に既婚者の方に読んでいただきたい小説です。
読みやすくて思わず笑ってしまう!不思議な構成の小説【レター教室】
著者:三島由紀夫
男女5人の手紙のやり取りだけで小説になっている不思議な構成です。
年齢、仕事も異なる5人が繰り広げる、怒りや喜び、妬み、嫉妬、恋模様などが豊かに表現されています。人の手紙をこっそりのぞき見している気分になります。
三島由紀夫が書いたのかと疑ってしまうほど読みやすく、ユーモアに溢れています。
今は携帯ですぐにメッセージが送れますが、届くまで数日かかる手紙も待つ間のいじらしさが味わえて楽しいなと感じました。
何十年かしてから読み返すと、また違う登場人物の視点で読めそうです。
三島由紀夫に抵抗がある人に是非読んでほしいです。彼の印象ががらっと変わると思います。
若い頃を思い出すとても印象深い一冊になります【明け方の若者たち】
著者:カツセマサヒコ
タイトルと装丁の美しく、印象的な本でした。
今の若者たちそのものを描いていて、友人の話を聞いているかのようなリアルさがありました。
内定のもらった会社に憧れて入社したのにギャップに悩まされ、本気で初めて人を好きになり忘れられなくなったり、激務の末会社を去って行く同期。気怠い空気感とどこか懐かしさがあり、流行の言葉で言うと”エモい”そのものです。
新入社員時代を思い出し、主人公に共感できるところがたくさんありました。
10章に分かれていて、章の文体が特殊文字で本にマッチしていてこだわりを感じました。
本を普段読まない人でもとても読みやすいので是非読んで欲しいです。男女関係なく若者の心にすーっと入ってくる1冊です。映画化してほしいです。
ちょっとした節目を迎えた男性におすすめ【旅のラゴス】
著者:筒井康隆
2200年前に高度文明を持ち込んだが、うまくいかずなぜか逆に原始に戻ってしまった世界でラゴスが南北を旅する物語です。
論理的思考のもつラゴスが旅中での出会いや再会、命の危機にあったり、不思議な世界にとびこんでしまったりと飽きさせない旅を描いています。
原始的な世界での旅の中で、現代社社会への異議を盛り込んでいる所は筒井康隆さんらしさが出ています。
ページ数は多くないですが、世界を1周してきたかのように読みごたえがあります。
冒険し続ける姿は男のロマンが詰まっているように感じました。男性にお勧めの1冊です。
小説でミュージカルを楽しんでいる気分になります【ブロードアレイ・ミュージアム】
著者:小路幸也
路地裏のブロードウェイにある小さな博物館が舞台です。
90年代のニューヨークでお洒落な感じが漂っています。
この博物館にはユニークなキューレーター達が働いていて、物に触れると人の悲劇を見てしまう不思議な少女フェイも住んでいます。
フェイの人懐っこくて、活動的でな所が可愛らしいです。
キューレーターの人の話に親身になりお節介なところは微笑ましいです。
ドタバタとし事件が起こり、みんなで解決していくおとぎ話のミュージカルを覗いているような気持ちになりました。
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